最近思うこと(研究・お仕事編)

久々に、ブログを書いてみることにした。
Twitterではいろいろ呟いているが、なんか長文が書きたくなったのだ。
自分の心の中のことを痕跡として残しておくためにも、この場を借りることにする。


2014年度の授業も、まもなく終わりを迎えようとしている。

今週の初めに、本務校(椙山女学園大学)での「日本文学史(現代)」の授業が終わった。
この授業は、前年度までの文学史の授業内容をある程度は踏襲しつつも、授業名そのものの変更により、内容も、自分なりにチャレンジしなければならないことが多くあった。
にしても、「文学史(現代)」とは、罪なタイトルである。
文学史」というからには、ある程度の時間的なスパンが想定されているべきはずなのだろうけれども、「現代」という枠組みによって期間が短く区切られてしまっている。

……まるで、長距離走(短距離部門)と言われているようなものではないか!

とはいえ、このタイトルを承認したのは、他ならぬ僕自身だ。
というわけで、《現代の文学を時代性を意識しながら考察する》という狙いを立てて授業をすることにした。これなら、あまり無理はあるまい。
そして、5つのテーマを立ててみた。

 ・コミュニケーションを重んじる社会
 ・増殖するラブコメ
 ・デジタルメディアの政治性
 ・「心の闇」をめぐる物語
 ・ループと世界認識

このテーマに関連する小説やアニメなどを取り上げて、私たちの生きる時代における考え方・価値観を話題にしていった。
まぁ、自分でも頑張って教えたつもりだが、もちろん頑張ったのは学生たちも、である。
最後の授業に、任意で感想を書いてもらったが、彼女たち(本務校は女子大です)が物語とか表現文化というものを考えていく上で、僕の授業がある程度の影響を与えたみたいなことが、それらの感想からうかがえて、僕としては「授業やって良かったな」と思っている。
もちろん、義理でそういうことを書いてくれた心優しい学生諸氏もいることだとは思うが、……そこはまぁ、いいではないか。
ただ、思いのほか多かった感想に「先生のおかげでいろんなアニメを知ることができました」的なものがあるのだが、注意してほしい、これは「文学」の授業だったんだよ。
(だけど、別に注意しなくていい)


2013年に初の単著『戦後日本の聴覚文化 音楽・物語・身体』(青弓社)を出して、しばらく経つ。
自分としては、そろそろまた何かを書きたい・出したい、と思い始める頃なのだが、この本のおかげで、研究者としての今の自分が支えられているなあということを、折に触れて思う。
たとえば、学会の機関誌などで書評していただき、非常にありがたいお言葉(ならびに課題)をいただいたりする。
また、聴覚文化関係の研究発表などの依頼をしてくださる人が現れたりもする。
僕が書いたものが、僕をいろんなところに連れて行ってくれるのだ。
これは僕が昔から(中学生頃から)思い描いていたことではないか。
ということで、僕はこの今の状況を、幸せなことだと思っていいのだと思う。……思わなければならないのだと思う。
しかし、僕は欲深い。
さらにいろんなところに連れて行ってもらいたいのである。
……というわけで、またいっぱいいろんな文章を書いて、本を出せるようにしたい。

ところで最近、本務校の所属学部(国際コミュニケーション学部)で出しているアニメ・マンガの研究同人誌『るいともっ!』のVol.3の編集・作成に関わっている。
……関わっている、とは言っても実際に編集してくれているのは、有志の有能な学生ちゃんである。
試験期間という多忙な時期に、非常に頑張ってくれている。感謝である。
そして、表紙絵も“俺得”的な感じで、非常に素晴らしく仕上がりつつある。これまた感謝である。
この研究同人誌もまた、この僕を、そしてもちろん学生ちゃんたちを、いろんなところに連れて行ってくれるだろう。
……連れて行ってくれるよう、事前の条件整備は必要だけれども。
その条件整備もまた、楽しいのだけれども。


ところで。
またまた「ところで」なのだが。
大学院時代の悪友(今は素晴らしい研究者)とお喋りする機会が最近あって。
そのお喋りの流れの中で、僕がその悪友に「いやいや、頼まれた仕事は基本断らないでしょ(断れないでしょ)」と言ってみた。
そしたら、「いつまでそんなことを言っているの?」的なツッコミを受けた。
その悪友いわく、依頼された仕事をいちいち引き受けていては、本当に自分のやりたい仕事をやる余裕がなくなってしまうではないか、もう既に職を得ている身としては、別に依頼を断ったからと言って立場がなくなることはなかろうに、ということのようである。
……確かにそうかもしれない。
しかし僕は、大学の職に就けなかった時期が長かったのである。
依頼を断ったら「あいつ生意気に。何様だと思ってるの?」と思われるのではないか、と思ってしまうのである。
もう仕事が来なくなるのではないか、と思ってしまうのである。
貧乏性なのである。
大学院生のメンタリティが抜けないのである。
……いや、ひょっとしたらその悪友は、「お前、もう40歳なのだから。そろそろ若い人に仕事を譲れよ(笑)」ということを言おうとしたのかもしれない。
その悪友、優しいから。僕に直接的にはそのように言わず、遠回しに言うつもりで、前述のようなことを言ったのかもしれない。
そうかもしれない。
しかしだ。
誰かが僕にもたらしてくれる仕事が、僕をいろんなところに連れて行ってくれるのだ。
その楽しさは、手放したくはない。
だから、たとえ多忙であっても、たとえ他にやりたい仕事があっても、よほどのことがない限り、引き受けたいとは思っている。
仕事を選ぶのもいいけど、仕事に選ばれるのも良いではないか。
(↑そう言えるうちが華、である。)
(世の中には「ブラック×××」というものが多々ある、という。)

……しかし、本当は忙しいのである。
仕事と趣味と生活との区別がつかないような領域に入ってしまうと、結局はずっと仕事をしているような気がして嫌になるし、ずっと遊んでいるような気がして後ろめたくもなるし、もうどうしていいか分からなくなるのである。


少しずつ、2014年度が終わっていく。
良かったこともあれば、反省すべきこともある。
謙虚に1年間を振り返りつつ、次年度に備えていきたい。
しかしその前に、レポートの採点が待っている。