『妖狐×僕SS〜シークレットなサービスなんて し、しないんだからね!』

先日(2月28日)に大学で、“その筋”を共有している若い研究仲間と一緒に、次のようなDVDを観ました。

 『妖狐×僕SS〜シークレットなサービスなんて し、しないんだからね!』

これは、アニメ『妖狐×僕SS』のファンイベントの一つで、CVを担当した声優さんたちがファンの前でトークしたり、ゲームしたりという内容。
僕はアニメ版のほうは見たことはないのですが、原作(藤原ここあさんのマンガ)のほうのファンです。
まあ、端から見ると「趣味で」映像を見ているように映るのでしょうが、当人たちにとっては一応「研究目的で」見てました……そのハズです。
じゃあなぜ「研究目的」と言えるのか。

声優とファンとの関係は、そもそもはキャラクターを媒介して成立しているんですよね。でも、その媒介者としてのキャラクターは容易に透明化してしまう。媒介者となるキャラクターは常に更新され、Aというキャラを通じて形成された声優とファンの関係は、Aとは全く繋がりのないBやCによっても形成されることになる。それによって声優とファンの関係も更新される、はずです。
しかし、Cを通じて形成される声優とファンの関係において、AやBが媒介者であったことは重要な《記憶》として機能する。《記憶》を参照することを声優もファンも互いに相手に対して要請するし、参照すること自体が楽しみや喜びだったりします。
ファンはステージ上で声優を見るとき、その声優の身体を見つつ、キャラをも見ようと思えば見れる。しかも、その切り換えは、かなり無意識的に。じゃあ、ファンは一体どんな現実を生きているのだろうか……。めちゃくちゃ気になるところです。
しかし残念なことに、僕はまだ、そんなファンイベントに生で体験したことがない! 本当に残念なことです。なので、せめて映像で追体験しよう、というわけで、見たのです。

その結果の報告。
まず趣味的な話から書きますと、僕は杉田智和さんのことが“好き”になりました。なんか……憧れます。なかなかあんな風な雰囲気を出せる人はそんなにいますまい! 今まで存じ上げなかった自分を恥じ入る。ただこれは、杉田さんの声に惹かれたというより、彼のタレント性に惹かれた、というのがポイント。声も素敵ですけどね。こういう「ファンのなり方」って邪道じゃないのかしらん。逆に言えば、声優さんは声がいいのはもちろんのこと、トークの能力とか、そういう部分も求められるようになったということなんでしょうね。
そして、日笠陽子さん! 『けいおん!』の秋山澪のCVをやっていたし、見た目的にちょっと大人っぽい人なのかなと思っていたのだが、めちゃくちゃお茶目で、話の脈絡と関係なく自分の空気を出せる人で、いちいち彼女の発言にびっくりしてしまった。いやあ、とても魅力的な人です。

でも、少し冷静に考えてみると、僕が日笠さんに感じるこの魅力は上記の《記憶》に基づいているんですよね。
しかも僕の場合、たちが悪いことに、キャラの性格と声優さんの性格とを結びつけてしまうという、きわめてナイーブな想像力から自由になれていなかった、ということ。
日笠さんの魅力に酔いしれつつも、これは反省しないといけないことかも。

しかししかし、「キャラが可愛い(キャラの声がかわいい)」→「CV担当した声優さんがかわいい」という回路は、多くのファンにも共有されているはず。あるいは、「声優さん素敵」→「その声優さんが演じるキャラが魅力的」という回路もあるはずだ。
となると、僕自身の反省も、宙づりな感じになる。

ファンは、いったい何を見ているんだろう。何を経験しているんだろう。

ファンは、声優さんだけを見ているわけではないし、声優を媒介してキャラクターを楽しんでいるわけでもないような。

きっとファンは、キャラクターと声優さんとの関係性を楽しんでいるんだよね。声優さんが、自分の演じたキャラクターを愛していたり、そのキャラクターが出てくる舞台(物語)を愛していたりすることが、ファンにとっても嬉しいことなんだよね。
声優さんがファンイベントで、そのキャラクターをイメージさせるような衣装を着たりして出てくることは(コスプレしたりして出てくることは)、必ずしも、声優さんがキャラクターと同一化しているところをファンに見せてファンに2次元と3次元を混同させて幻惑させることを狙っているわけではないんだ。
そうではなく、声優さんたちは、キャラクターと自身とが同一化しているように見せることで、そのキャラクターへの愛をファンに示そうとしているんだ、きっと。
……でも、すべてがそういうわけでもないんだろう、きっと。
その意味で、キャラクターと声優さんとファンとの関係性は、ケースバイケースで考えていかなければならないんだろう。

そんなことを感じることができました。これって充分に「研究」でしょ?

にしても。昨年あたりから、アニメの見方が変わってしまった。
今までは割と声優の存在を透明化させて、キャラクターが当事者となっている物語を味わっていました。
しかし今は、キャラクターの声が聞こえて聞こえてしょうがない。どの声優さんが担当しているのかが気になって仕方がないんです。

これってミーハーになったってこと? それともキャラクター消費に走るようになったということ?
僕としては、メディア経験としてアニメを視聴するようになったことだと理解しているんですけどね。

……まだまだ考えがまとまりません。もう一回、見てみなきゃ。

妖狐×僕SS~シークレットなサービスなんて し、しないんだからね! ~ [DVD]

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