日本近代文学会東海支部 第44回研究会

昨日は、学会(支部例会)でした。
簡単に、その報告です。
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日本近代文学会東海支部 第44回研究会
2012年6月30日(土)愛知淑徳大学星ヶ丘キャンパス

・五嶋千夏(知立東高校)
  「「ポラーノの広場」と1920年代後半の産業組合  組合意識の形成」
・張鈴(名古屋大学大学院)
  「「新中」と「協力」の間  戦時下の豊島与志雄の活動と文学」
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まず五嶋さんの発表。
宮沢賢治の小説「ポラーノの広場」(恥ずかしながら僕は未読です)を取り上げて、当時の組合の機関誌『家の光』との共鳴を読み取るというものでした。
「農村」と「都市」とを二項対立的に意味づけていく行為が、様々な立場から様々な思惑によって行われていった1920年代の状況を浮き彫りにするものでした。
分析の結末をどうつけるかという点で、フロアからいろいろ意見が出てましたが、最終的に発表者の文学観・歴史観・文化観で束ねるしかないでしょう。
にしても、高校の先生をやりながら多くの資料にあたって調査・研究したというのが、すごいなあと思いました。

張さんの発表について。
「東亜文芸復興」という文学運動に日本と中国の知識人たちがどう関わろうとしたかという点が、僕には興味がありました。
発表者自身が日本語と中国語の両方に精通しているからこそ可能になった研究だな、と思いました。
僕自身は、過去に小島信夫アメリカン・スクール」を論じた際に、日本人英語教師が植民地でどう活躍しうるのかという当時の議論に注目していたので、やはり、「東亜文芸復興」という話題が出てきたときも、日本と中国(および他のアジアの地域)が、どのような言語で「東亜」「文芸」を捉えようとしていたのかが気になりました。
ポストコロニアル研究っていうのは随分以前から行われてきていますが、まだまだいろんな可能性や課題が残されているなあ、と思った次第です。

普段僕は学生たちと、やれマンガだ、やれアニメだ、と戯れてきているわけで、それでも無論、それらの中に潜む現代的な問題にも目を背けず、やりあってきているわけですが、
久しぶりに文学系の学会に参加して、久しぶりに「硬派な」文学研究に触れて、
「こういう世界にも、自分は帰属していたのであったぞ」
と改めて思い知ることができ、良かったと思います。
……だからといって、アニメが「軟派」だとは思ってもいないぜ。

学会の後の懇親会では、今年度から東海地区にいらっしゃったWさんと初めてお会いしてご挨拶することができたし、名古屋大学だけでなく、愛知教育大学愛知淑徳大学の院生さんともお話ができたし、「戦友」でもあるM君と意見交換もできたし、有意義な1日でした。

さあ、来週は、自分が直接絡むイベントです。
頑張ります。