花澤香菜『claire』を聴いて

今日(というか昨日だ)は個人的にはシビアな一日でした。
妻と子ども2人(つまり3人)が胃腸炎に罹り、元気な大人が僕だけということで、今日は仕事を休み(そのため他の先生に迷惑をかけてしまった)、病院行ったり、病院行ったり、買い物行ったり、ご飯を食べさせたり、そしてまた病院に行ったり。
もちろんこうしたことは、普段は妻がやってくれているわけで、たまたま今日一日僕がそういう過ごし方をしたということだけなのであって、いちいちそんなことで愚痴とかを言ってはいけないのだろうけれど、でも慣れていないことをやり、普段とは違う神経を使ったので、ちょっと疲れてしまいました。
友人からは「(名古屋にいるなら)ワイン飲みに行かない?」という電話の誘いもあったのですが、それどころではなく、そんな夜、ワインを羨ましく思いながら、家族みんなが寝静まった後、近所のラーメン屋に行き、焦がしニンニクがたっぷり入ったラーメンと餃子を注文し、それでも疲れが癒やされた気にはなれず、19日に自宅に届いた花澤香菜さんのファーストアルバム『claire』を聴きました。

すごく優しい歌声で、癒やされましたね。
ただ、何度も何度も繰り返し聴いていて、もう既に眠いのに、それでも聴いていて、寝ればいいのに聴きたいから起きていて、だんだん疲れてきました。やばい。意味ない。

花澤香菜さんは、言うまでもなく、最近めちゃくちゃ活躍している声優さんです。
ただ僕にとってのきっかけは、声優さんとして花澤さんではありませんでした。
以前にもブログで言及したかもしれませんが、僕は Round Table というグループが好きで、その中心人物である北川勝利さんが、歌手としての花澤さんをプロデュースしているのです。
そのことがきっかけで、音楽がきっかけで、花澤さんのことが気に入るようになりました。

Round Table は北川勝利さんと伊藤利恵子さんの二人組のグループです。「渋谷系」と言われているらしいですが、とてもメロディを丁寧に作るソフトロックのバンドというのが、僕の印象です。北川さんも伊藤さんも両方ともボーカルをしますが、特に北川さんのボーカルは、変な力が入った感じもなく、とても聴きやすいです。そして何よりも「音楽が好き」というのがすごく伝わってきます。僕のオススメは『Feelin' Groovy』『RADIO BURNIN'』『Big Wave Sunset』です。

そんな北川さんが花澤さんのプロデュースをするのですが、花澤さんの声も変な力が入っている感じがなく、前述のように優しい歌声で、北川さんの作る音にとてもマッチしていると思います。
もちろん、北川さん以外のミュージシャンもアルバム制作に参加しています。僕が『claire』収録曲の中で好きなものの一つに「melody」というのがありますが、これはクラムボンのミトが曲作りに参加しています。

『claire』については、ナタリーでも紹介されていますね(http://natalie.mu/music/pp/hanazawakana)。そこに、北川さんの発言も載っているのですが、きわめて重要な発言があります。

──今1990年代を振り返るように、10年、20年先から今の時代を振り返ったとき、2013年は大きな変化があった年だと感じるんじゃないかという予感がします。その中心にあるのがこのアルバムなんじゃないかと大げさでなく思っていて。

それはこのアルバムを作っているときにすごく感じましたよ。のちのちすごく重要な1枚になることは断言できます。自分がアニメの世界を選んで音楽を作り始める前から、「ROUND TABLEってコピーじゃん」って言われてるのは認識してて。ただのモノマネでしかない。それで叩かれたり、低く見るような言い方で「今アニソンやってるんでしょ」って言われることも多かったけど、自分が選んだ音楽で常にクオリティを上げて曲を書き続けるしかなくて。長い目でみたときに、自分が音楽を続けるにはその方法しかないと。すごいデビュー作を出して早々に消えるみたいなのもカッコいいけど、僕がやりたい音楽はそういうのじゃなくて、スタンダードなものとして残っていく音楽がやりたいんですよね、やっぱり。何十年かあとに並べて聴いたとき、どこを振り返っても恥ずかしくないものを作りたい。そうやって積み重ねてきたものが、このアルバムではサウンドプロデューサーとしてうまく出せたかなと思っています。

ここにある北川さんの発言「自分が選んだ音楽で常にクオリティを上げて曲を書き続けるしかなくて」ってところに、僕は言葉にできない思いを感じてしまいました。
すごい決意だと思うし、いろんなものに取り組んでいる様々な人の心にも刺さると思います。
僕の場合は「文学研究/文化研究」というのがあるわけだけど、それにも通じるような気がしました。